アグロフォレストリー通信 #41 人はなぜ山に登るのか
先日北アルプスの最深部、三俣山荘を目指して登山してきました。三俣山荘は鷲羽岳の麓に位置する山荘で、私たちはたどり着くまでに2日間かけてのぼりました。事前の天気予報は雨。山の天気は変わりやすいという言葉を信じて向かいましたが、登山口は小雨が降っていました。道中真っ白な小雨が降る中を重い荷物を背負ってひたすら息を切らしながら登っているとふと人はなぜ山に登るのだろうかという考えが浮かんできます。6時間くらい登った後、頂に着くと急に雲が晴れて視界が開けて一面の山の稜線が姿を現しました。その時の興奮と感動で人はなぜ山に登るのかがわかった気がしました。達成感とか自分と向き合う時間とか理由は人それぞれだと思いますが、私にとってはこの美しい雄大な自然に包まれて生きていることを全身で感じられるところが理由かもしれません。
三俣山荘につくと、その歴史が展示されていました。三俣山荘は、戦中戦後に伊藤正一という人によって建てられています。伊藤さんは登山家として山を散策している中でその美しさに感動し、この地に山小屋を築きたいと思い、私財を全て投げ打って山小屋を作ります。ヘリコプターで資材を送るようなことができなかった時代です。板や建築素材は、全て人の手によって運ばれていました。見ている方が足がすくむような細い吊り橋のようなものを、たくさんの荷物を背負って進む人々の白黒写真を見たときに、こんな山道をこれまで開拓してくれていたのかと、頭がさがる思いでした。私たちが今まで登ってきていた道は石や岩場が多かったのですが、それらが全て先人たちによる手積みだったと知ったときにはとても驚きました。そんな途方もない大変な思いを重ねながらも、この自然に親しんでほしいという先人たちの思いが、現在まで何度も補修を繰り返しながら受け継がれていることの素晴らしさを感じました。山荘には一泊して次の日一気に駆け降りたので、帰りはもう足がふらふらで疲れ切っていました。大変な思いをするとわかっていながらも、今後も山登りは止められないと思います。
2026年9月25日
武田瑞季
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