アグロフォレストリー通信#27 生き物がいっぱいいると何がいい?

Kurumiru/ 7月 18, 2025/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments

拠点を千葉の鴨川に移して1年が経ちました。最近は鴨川で生き物調査をしています。探し始めてみると田んぼ、畑、家の中、森の中、場所によって違う様々な生き物が生息していることが分かります。さらに一括りの虫にも色々な種類があることも分かります。普段ゲンゴロウとしか見ていない虫でもヒメゲンゴロウとかマメゲンゴロウとか色々な種類がいるんです。当たり前と言えばそうなのですが、些細な違いを見つけて種類を見分けられていくと、分かったことが一つ増えて嬉しいものです。探す目を持つと今まで見えていなかったものがどんどん見えてきます。普段気にも留めていなかった場所が生き物に溢れていることを知ります。そして探しているものを見つけるのは嬉しい。珍しい生き物を見つけた時にはお宝を発見したかのような喜びを感じます。

生物多様性は高いほど良いといいますが、生き物がたくさんいることがどうメリットに繋がるのでしょうか?「生物多様性」これは単に生き物が多様ということではなく、大きく3つの多様性から成り立ちます。
「生態系の多様性」森林、里山、河川、湿原、干潟、サンゴ礁など色々な環境が存在し、それぞれの環境に適応した多様な生態系が形成されている状態です。
「種の多様性」動植物から細菌などの微生物にいたるまで、多様な種類の生物が存在している状態です。
「遺伝子の多様性」同じ種でも個体や地域によって異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性がある状態です。これにより環境の変化や病気への適応能力が高まります。

(図1)ヒグマは川から鮭を捕まえて食べますが、その死骸を森に残すことで川から吸収された鮭の栄養素が土に入り、植物に入り、虫に入り、鳥に入り...土壌中から雨水に混じってまた川に流れて循環していきます。

なぜこの生物多様性が重要なのか。とある場所でお米を食べてしまうスズメを駆除したところ、スズメが食べていた小さな昆虫が増えてしまい、むしろ被害が広がったという話があります。小さな虫を食べる大きな虫がいて、それを食べる鳥がいて、さらにそれを食べるヘビがいて、さらにそれを…というように、全ての生き物は互いの相互作用によって絶妙なバランスで成り立っています。その一つでも欠けてしまうことはその絶妙なバランスが崩れ、全体に大きな影響を与える可能性があります。
それから生き物には自然環境そのものをつくる役割もあります。微生物が土壌を分解し、いい土を作ることで植物が生えます。その植物を食べる虫がいて、蜂は花の蜜を吸うことで花粉を交換し受粉を助けます。鳥や獣は植物の種子を体にくっつけたり、実を食べた後種入りの糞をすることで、種を拡散します。そして生き物の死骸や糞が土壌をつくり、また新しい植物の種が芽吹きます。(図1)そうやって生き物によって循環が広がり、環境がつくられていきます。

(図2)人間社会に提供する恩恵

多様な生物と自然が作り出した豊かな生態系が、人間社会に提供する恩恵は様々あります。具体的には食料、水、木材などの供給、大気や水の浄化、気候の安定化、自然災害の軽減、レクリエーションや文化的な価値の提供、病気の予防などです。(図2)水や空気、土、豊かな土が育む食料、どれも私たちが生きていくために必要なものばかりで、これらの働きがなければ、私たちの生活は成り立ちません。

今週末はSoil to Soul FARMPARKで生き物探しのイベントがあります。子供たちにも生き物を発見する楽しさと身近さ、そしてより知りたいという知的好奇心を持ってもらえるきっかけとなったら嬉しいなと思っています。3連休の最終日、お時間ある方はぜひ遊びに来てください。

生きものの煌めき。生き物探しはこの地球に生きる仲間のことをたくさん知れるような気がして楽しいのです。

2025年7月18日
武田瑞季

前回のアグロフォレストリー通信#26種とりの翁はこちらからご覧いただけます。

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