目の前に広がる青い空と海。波音に響く鳶の声…

Co•En Corporationは今月、千葉県鴨川市の海の近くに拠点を新設しました。今後は、東京と鴨川、ときにマダガスカル、ときにボルネオの活動になります。引き続きよろしくお願いします。しかし、なんで鴨川なのか。今回はその話をしたいと思います。

僕たちは普段から講演や営業先のケーキ屋さん、出店するマルシェなどで、マダガスカルの写真や動画を見せながらアグロフォレストリーの素晴らしさをよく口にします。そんなときに、「アグロフォレストリーが素晴らしいのはわかった。そんな素晴らしいアグロフォレストリーは、日本にはないのか？」という質問を受けることがよくあります（アグロフォレストリーについてはこちら（Youtube動画による解説）をご覧ください）。

「あります。」あえてアグロフォレストリーと呼ぶ必要はないかもしれませんが、日本の里山の山地はまさにアグロフォレストリーです。人里に隣接する山には建材となる杉や檜の他に、柑橘や枇杷、栗、柿、梅などの果実や竹、シュロなど農具や生活に有用な種が植えられています。山で採れる山菜やきのこ、薬用植物も多く利用されてきました。マダガスカルのアグロフォレストリーといえば、バニラの他に、パイナップル、バナナ、キャッサバ、コーヒー、カカオ、コショウ、柑橘、ライチ、アボカド、シナモン、クローブなどの食用や換金作物を中心に構成されます。栽培されている種は違えど、一箇所に複数の植物が茂り森のような場所が作り出されている点では日本もマダガスカルも同じです。

ただ、アグロフォレストリーをする意義を考えると両者では異なってきます。マダガスカルでは、なくなってしまった森を再生させるという目的が強いですが、日本では使われなくなって荒廃した森を再生させるという意味合いが強いと思います。日本の里山には、その土地特有の食材やそれをもとにした文化があります。これは、そこに住んできた人たちが長い長い長い年月をかけて培ってきた、人が自然と上手に付き合うための知恵の結晶です。ところが今、人口減少と高齢化によって継承する人が少なくなり、人類にとって貴重なこの財産が多くの場所で失われようとしています。里山を再生させることは、里山の美しい風景の中にあるこの宝物を次世代に残すことでもあるのです。

そんなわけで、日本にいるときは里山で生きる人たちと一緒に仕事がしたいと思っています。そんな中で出会ったのが、鴨川で活動する苗目の井上さんでした。