アグロフォレストリー通信#17 棚田もアグロフォレストリー ! ?

Coen.mg/ 7月 20, 2024/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments

アグロフォレストリー通信#17 棚田もアグロフォレストリー ! ?

千葉県鴨川市に引っ越してきて1ヶ月。鴨川に暮らす中でつい見惚れてしまう風景があります。それは稲穂が風にそよぐ、一面に広がる田んぼの風景です。夕日に照らされて輝く田んぼの美しい光景についつい見惚れてしまいます。そして鴨川市は棚田が有名な場所でもあります。

アグロフォレストリー通信ではこれまで様々なアグロフォレストリーの様子や要素を紹介してきました。実はその場所がアグロフォレストリーであるかどうかの境界線は時に曖昧で、アグロフォレストリーには様々な種類やかたちがあります。学術的には「同じ土地で樹木と作物、あるいは家畜を同時に(あるいは交代で)組合わせることによって単位面積あたりの生産力を増加させる土地利用システム」と定義づけられています。

みなさんはアグロフォレストリーと聞いて様々な木々が茂る森林を想像すると思います。一番上に大きい木が茂って、その下に中位の果物をつける木が茂り、さらに下にコーヒーなどの低木、さらに下にパイナップルなど地面に生えるものというような垂直のかたちを持つ森をイメージするのではないでしょうか。農家によってスタイルに違いはありますが、Co・En Corporation の扱っている、マダガスカルやボルネオのアグロフォレストリーもこれに該当します。その他にも、ある程度の広すぎない幅で樹木や作物を水平方向に配置するかたちや、森林の中で放牧を行う林業と畜産業の組み合わせ、水田と樹木の組み合わせなど世界中には様々なかたちが存在しています。

マダガスカルのアグロフォレストリー内で放牧されていた牛たち。

日本のアグロフォレストリー研究の第一人者、渡辺裕之先生の著書、「熱帯の森から」には世界各地のアグロフォレストリーのかたちや文化が紹介されています。その中に、棚田もアグロフォレストリーになりうるという一節がありました。最初はどういうことかと疑問に思っていたのですが、棚田には山からの安定した水の供給が必要不可欠です。そのためにはもちろん森林がなければなりません。棚田がその上流の森林と一体のものとしてつくられていれば、これもアグロフォレストリーとして認められるということでした。

土地利用には農家のスタイルの分だけかたちがあります。また土地や地域によって適応するかたちも違います。大切なのは定義にこだわることではなく、実践することなのだと渡辺先生はおっしゃいます。

森を手入れし、森の恵みを受け、自然と人間が共にある。そんな場所を流域という広い範囲で考えて維持すること。それが持続可能なシステムを作るためには必要なことなのだと改めて考えさせられました。

参照「熱帯の森から」渡辺裕之著

マダガスカルのアグロフォレストリーと田んぼ。一見すると日本の風景のようですが、ところどころ見られるヤシの木に南国を感じます。

2024年7月19日
武田瑞季

前回のアグロフォレストリー通信#16 土地利用の歴史とアグロフォレストリーはこちらからご覧いただけます。

 

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