Kurumiru/ 9月 26, 2024/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments
前回のアグロフォレストリー通信ではクマについてでしたが日本古来より人と森の関係を繋いできた人、それはマタギではないでしょうか。マタギの歴史は平安時代まで遡るそうです。主に東北地方・北海道で集団で狩猟を行う人々を指す言葉で、獲物はクマの他にもカモシカ、ニホンザル、ノウサギなども対象としていました。
猟師とマタギの違いは何でしょうか? それはマタギが独特の文化やしきたりを持つところにあります。山の神を信仰し、マタギの間で受け継がれる掟を守り生きていきます。例えば山の神は嫉妬深い女性と信じられていて狩りは女人禁制です。その姿は醜く、自分より醜いカサゴを供えると喜ぶという不思議な習わしがあります。また山に入ると日常生活の汚れをはらうために、マタギ言葉というマタギしか使わない言葉が使われました。タブーも多くあり、山では咳払い、あくび、歌を歌うことや口笛を吹くことはしない、結婚披露宴や出産などお祝い事には参加しない、贈られたお菓子や引き出物を食べることさえも許されないなど厳しいルールがあります。クマをしとめたとき、解体するときは収穫を感謝する呪文を用います。そしてマタギ達はクマの肉だけでなく毛皮や臓物、油に至るまで全てを利用します。獲物を山の神の恵みとして感謝し必要以上に乱獲せず、厳しい自然を生き抜く術を身につけていきました。
マタギはアニミズム的な宗教観を持つと言います。アニミズムとは、生物だけでなく木や石など、すべての物のなかに魂が宿っているという思想や信仰のことです。そしてマタギから山岳信仰というものが生まれました。山岳信仰とは山を神聖化し崇拝の対象とする信仰です。山の神に感謝し、獲物を余す事なく利用すること、厳しい掟を守り、山の神が怒らないようにつとめること。これは地震や洪水、冬の厳しい寒さといった自然の厳しさを多く享受してきた日本だからこその思想なのかもしれません。山に対する信仰は日本人の森林に対する感覚や関わり方を知る上で大変興味深いものです。西洋では自然を管理や支配の対象とする一方、日本では自然をコントロールすることができない尊重すべき存在とする、全く違う自然観を持つという話をよく聞きます。次回は日本人の自然観について詳しく見ていきたいと思います。
2024年9月25日武田瑞季
前回のアグロフォレストリー通信#18 キムンカムイ(山の神)はこちらからご覧いただけます。
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