ところで、先月のニュースレターにこのような感想をいただきました。「アブラヤシは現地の人の利益になっているのに、どうしてアブラヤシの森ではだめなんでしょうか? テンカワンの木はよくてアブラヤシがダメな理由がいまいちよくわかりません。難しいです。」
素直な感想に考えさせられました。 僕は当たり前だと思っていたことですが、改めてそう聞かれると、この質問にわかりやすく答えることが意外と難しいことに気が付きます。さてどう答えるか。
今残っている自然は、生命が誕生した40億年前からの途方もなく長い長い時間の結果、ここにこのようにしてあります。長い長い時間をかけて土の中の細菌から、草木や昆虫、魚、鳥や動物に至るまで無数の多様な生き物が誕生しお互いに関係し合って安定した仕組みをつくりあげています。そのおかげで地球環境は僕たちが何とか生きていける程度に安定しています(安定しているから僕ら人間が誕生できたといった方が正しいかもしれません)。この仕組みをぶっ壊して作り替えてしまうと、自然はそして地球環境は不安定になり、僕らも生きづらくなるでしょう。厄介なのは、一度壊してしまった自然は、元にはなかなか戻らないということです。長い長い時間をかけてつられた超複雑で巧妙な仕組みは、とても人間に作り出せるものではありません。人工的には作れないのです。自然の森を畑にすることで、食料やお金を手に入れることができるかもしれません。それはとても重要なことですが、でも同時に、とてつもなく大きなものを失っていることを忘れてはいけないはずです。 人間は長い間自然と共に暮らしてきました。そして自然を上手に使う様々な知恵を蓄積してきました。それが食文化であり伝統医療でしょう。自然がなくなることで、これらの知恵も失われてしまいます。
人間は、これまでにもう十分なほど広大な自然を破壊してしまいました。 これ以上破壊してしまったら本当にどうなるか分かりません。そんな難しい時に今僕たちはいるのだと思います。だから少しでも残っている森を守りたいし、少しでも森を元の姿に回復させたいと思うのです。そのためのアグロフォレストリーだし、僕たちの活動だと思っています。やっぱりわかりやすい簡潔な言葉にするのは難しいですね。
まぁ、こんなことを考えながらマダガスカルでの刺激的な時間を過ごしています。現地の様子、感じたこと、考えたことをInstagramで発信しています。フォローいただけるとうれしいです。