アグロフォレストリー通信#14 森と文化

Kurumiru/ 4月 22, 2024/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments

食べ物や水、住居を生み出してくれる森。森と人とは長い年月をかけて関わり合いながらそこには文化が形成されていきました。森を開墾して焼畑をし森の中で農耕を行う焼畑民族。森をフィールドに鹿や猪など狩りを行う狩猟採集民族。人々の生業と森は深く結びついています。

ボルネオ島サラワク州には先住民族として、焼畑民族のイバン人や狩猟採集民族のプナン人など20の民族集団が公式に認められています。起源は1万年前〜数千年前に東南アジアの大陸部から移動してきた人々の子孫ですが、言語、生活様式、衣服、食、音楽、慣習、それぞれ似たところもありながら特有の文化を持っています。

とある学者がボルネオ島サラワク州の民族間での植物に対する知識を調査したところ、西プナン人は植物の知識を網羅的に持っていて、ロープなどに利用する樹皮、食料を包むのに適した葉など物質的に利用する種を多く分類していました。一方東プナン人は、植物全体の知識はそこまで詳しくなく、自分たちにとって利益のある、特に薬効がある植物にとても詳しく、同じ狩猟民族で言語も近いにも関わらず、両者の持つ植物の知識が全く違うということがわかりました。そして焼畑民族のイバン族は他の民族よりも食べ物として有用な植物に詳しく、綿の染色と機織りの伝統を持っていることからも他民族よりも多くの染色植物を利用しているということがわかりました。さらには民族によっては同じ植物でも使い方が違うこともあるというのですから、非常に興味深いです。また、呪術に対抗する植物や異性を惹きつける植物など、食用にできるか物質として実用的かどうか以外にも私たちには知り得ない植物の知識があることにワクワクさせられます。私も実際にイバン族の森を歩いてまわりましたが、彼らは実に多様な植物がある中でそれが食べられるのか、食べられないのかをよく知っていました。