バニラな毎日

Coen.mg/ 3月 31, 2025/ Newsletter/ 0 comments

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「最近は、オーガニックとかフェアトレードなどの認証と合わせてトレーサビリティが重要視されるようになってきた。」という話をよく聞きます。なんのこっちゃ? と思った方も多いかもしれませんが、今回はこのことをマダガスカルの状況にも触れながら書きたいと思います。

まず、トレーサビリティという言葉がわかりにくいですよね。トレーサビリティは日本語では透明性などと訳されますが、ここでいうトレーサビリティは、製品がどこの誰によってどのように作られたのかという情報が開示されていることをいいます。さらにいうと、「どこの誰によって」というのは、製品に使われている原材料の一番最初からすべてわかることが求められます。例えば、この前食べたバニラアイスクリーム。作ったのは目の前にいるパティシエですが、その材料である卵、ミルク、砂糖そしてバニラビーンズが誰によって作られたものであるか。そこまでたどることができることをトレーサビリティもしくはトレーサビリティがあるといいます。別の例でいうと生産者の顔が見える〇〇や、Farm to Tableとうたう製品はトレーサビリティがあるといえるでしょう。

トレーサビリティが今求められているということは、逆にいうと現在はトレーサビリティがない製品が圧倒的に多いということになります。ただ、誤解がないようにいうと、こういったやり方が間違えているというわけではありません。規格製品の大量生産を行う場合は同等の品質の材料を大量にしかも安価に仕入れなければなりません。したがって、とにかく材料を多くの生産者や生産地から集めなければまかないきれない場合も多いでしょう。また、生産者間の競争を促しますので生産の効率性や品質の向上につながることが期待されます。ただ、生産者に比べて買い手の力が圧倒的に強い場合には過剰な競争を生んで、強制労働などの人権問題や森林伐採などの環境問題に繋がっていくこともあります。

昨今、トレーサビリティが重要視されてきたのにはいくつかの理由があります。まずは品質管理の観点が挙げられます。特に食品では素材の良し悪しが最終製品の質に影響を与えやすいです。また、栽培時に使用される農薬などの混入は後から取り除くことは困難です。ですので、栽培など最初の時点から管理したいというモチベーションが生じます。加えて、仕入れ先を生産地までたどることができれば何か問題が発生したときに、迅速に原因の究明や改善などの対応をすることができます。違った視点では、環境や人権問題に対応しようとするような動機もあります。農地や鉱山などの開発は環境に甚大な影響を与えています。また、貧困に苦しむ人が多いのも一次産業です。自社が使っている原材料でこのような社会問題が起こっていないことを確認する、またより積極的にはそのような課題の解決を目指す、そういった企業もあります。いわゆる持続可能な原材料調達とか責任ある調達、もしくはエシカル調達といわれるものです。アメリカでは「子供たちが食べるお菓子に使われているバニラを子供たちに作らせていいのか。」ということを訴えて改善を求める運動が起こりました。これに対して政府や企業が問題解決に乗り出しています。

また、気候変動による気温の変化や洪水、旱魃などの影響を受けて作物の収量や質がとても不安定になってきている昨今、食品などのメーカーが農家を支援する動きもあります。自分たちが使う原材料の生産をより安定的にするためです。どういうことかというと、バニラで例えると、バニラに関連するプレイヤーには、まず1. バニラを栽培する農家がいて、2. 加工・輸出業者がつづき、 3.輸入・卸売業者、そして4. 香料メーカーや食品メーカー、シェフ、パティシエがいます。そして最後に消費者につながります。1〜4それぞれの立場で利益を追求しようとすると、前からはできるだけ安く買おうということになります。でも、安すぎる価格で買い続けるとそれをつくる人たち(例えば1の農家)が疲弊してしまいます。長い目で見ると農家だけではなく産業全体が衰退してしまいます。また、1.の農家は最新の情報や技術を持ち合わせていないことが多く非効率的な農業を行っていることもままあります。だから、その産業を持続可能なものにするためには、農家から適正な価格で買取続けること、農家に技術的な支援をすることがとても大切です。4のメーカーの立場からすると、そのためには当然自分たちが手にしているバニラを栽培しているのが誰かということをまずは知る必要があります。ここにトレーサビリティの重要性があります。その上で、1〜4に位置する企業が、産業を支えるパートナーとして共に発展する関係を模索する。そうしてこそバニラの産業が持続的に繁栄できるのではないでしょうか。

バニラに関しては、輸入業者が中心となってSustainable Vanilla Initiative (SVI) という国際的な団体を組織し、この取り組みを前に進めようとしています。私たちCo•En Corporationのサプライヤーは、産地の情報を提供するなどしてSVIの活動に協力しています。彼らの農園はすべて地図上にマッピングされていて、森林が減少している地域と重なっていないかがモニタリングされています。また、SVI会員企業とともに、例えばマングローブ林再生プロジェクトなど生産者コミュニティーへの支援を行っています。今回のマダガスカル視察では彼らの活動を見てきました。現地では協同組合が組織され、アグロフォレストリーが広がり、品質管理や向上に必要な情報が伝達される、そしてバニラの販売によって得られた利益がバニラの生産地の広い範囲に還元される仕組みがしっかりと築かれていました。本当に素晴らしかった。

バニラを含む香辛料ではトレーサビリティとか持続可能な原材料調達とか責任ある原材料調達とかということが話題にのぼることは国内では稀です。コーヒーやカカオなどに比べると動きが遅いなと思います。でも少なくともバニラの一大生産地であるマダガスカルでこのような動きが進んでいます。加工・輸出業者までであればまだしも、農園までトレースが取れるマダガスカル産のバニラは世界的にもまだ珍しいでしょうし日本ではほとんど流通していません。でも、この数年のうちにそういうバニラがもっと手軽に購入できるようになるかもしれません。ちなみにバニラの花言葉は「永久不滅」。バニラの香りを楽しめる毎日。これをこれからも末長く続けるためには、こんな環境が少しでも早く整うことが望まれます。

2025年3月24日
合同会社Co•En Corporation
代表 武末克久

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