今回の視察では、イリッペの収穫の喜びと共に現状の厳しさも感じてきました。プロジェクトに参加する村の村長は、「イリッペの収入だけでは村人を説得するのは難しい」と訴えます。村民は農地や森をオイルパーム農園に転換しないかとの誘いを、パーム油を扱う企業から受けています。オイルパームの農園にすることで収入を激増させるという提案です。実際に、水田にアブラヤシが植えられているところも目にしました。このままでは、守りたい森を守ることができないという強い危機感を村長は持っています。
経済合理性でものごとが動く現代社会において、守りたい森を守るためには、この森をアブラヤシ農園よりも村民にとって価値あるものにすることが必要でしょう。前回のNewsletterで「森にある素材を活用し販売することでその地域に経済的な価値を還元する。そうすることでその森が守られる。僕たちはそう信じています。」と書きました。それがとても難しいことを痛感します。同時に、「この挑戦は、古いようで新しい、とても楽しくて充実したものです。」とも書きました。これもその通りだと感じています。難しく創造的な挑戦です。現地滞在中に、イリッペバター以外の製品やエコツーリズムの可能性などが話に挙がりました。本当にこれだけで森を残すことができるのか? 絶望すると同時に、でも現地には強い意志を持って前向きに取り組んでいる人たちがいる。なんとかできるかもしれないという希望を持ちながら日本に帰ってきました。
今回の訪問について、3月30日に報告会を開催します。ボルネオで見てきたこと、話したこと、感じたことをお伝えしたいと思っています。バーチャルエコツアーに参加するような感覚で、多くの方に参加いただければと思っています。