絶望と希望と

Coen.mg/ 3月 19, 2024/ Newsletter/ 0 comments

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森の中は比較的涼しいとはいえ、熱帯雨林を歩くと汗が吹き出します。と、高いところで木の葉がざわめいて爽やかな風が吹いてきてきました。心地よさに目を細めていると、ドスン、ドスンと木の上から何かが落ちてくる音が聞こえてきます。これはもしや! と歓喜しながら辺りを見渡して目的のモノを探しました。

ここはボルネオ島の西カリマンタン。インドネシアです。先月、イリッペという木の実の収穫を見に行ってきました。この木の実の硬い殻の中にある種子を絞るとイリッペバターと呼ばれる植物油が取れます。イリッペの実をつけるのは熱帯雨林を象徴する大木で、ゆえにイリッペバッターもボルネオの熱帯雨林を象徴する製品です。イリッペは、なぜか3、4年に一度しか実をつけないという変わり者ですが、今年がまさにその年なのです。

探していたモノは、ふかふかの落ち葉の上にありました。思っていたよりもずっと大きくてずっしりとしていました。羽があるのでクルクルと回りながら落ちてくるのでしょうが、その様子は飛ぶというよりも落下するといった方が正しそうです。最初のひとつが見つかると、2つ目、3つ目…とたくさん目に入ってきました。

イリッペの収穫の様子

イリッペは、収穫といっても落ちている実を拾うことになります。この時期は多くの村人が森に入り大量のイリッペを籠に集めて運び出します。数年に一度のことですのでボーナス的な感じになりますが、これが彼らの収入になります。

現地では、村人一人ひとりと契約をしてイリッペを買い取り、ヨーロッパなどの企業にちゃんとした価値をつけて販売している企業があります。契約ではイリッペを全量買い取ることが約束されています。代わりに村人はイリッペの森を保全することが求められます。契約を結ぶ村民は1000戸を大きく超え、50,000ヘクタールほどの森が保全の対象となっています。私たちはこのプロジェクトに共感し、この企業をパートナーとしてイリッペバターを日本に紹介しようとしています。

森の周辺で目にした鮮やかな色のカメムシ

今回の視察では、イリッペの収穫の喜びと共に現状の厳しさも感じてきました。プロジェクトに参加する村の村長は、「イリッペの収入だけでは村人を説得するのは難しい」と訴えます。村民は農地や森をオイルパーム農園に転換しないかとの誘いを、パーム油を扱う企業から受けています。オイルパームの農園にすることで収入を激増させるという提案です。実際に、水田にアブラヤシが植えられているところも目にしました。このままでは、守りたい森を守ることができないという強い危機感を村長は持っています。

経済合理性でものごとが動く現代社会において、守りたい森を守るためには、この森をアブラヤシ農園よりも村民にとって価値あるものにすることが必要でしょう。前回のNewsletterで「森にある素材を活用し販売することでその地域に経済的な価値を還元する。そうすることでその森が守られる。僕たちはそう信じています。」と書きました。それがとても難しいことを痛感します。同時に、「この挑戦は、古いようで新しい、とても楽しくて充実したものです。」とも書きました。これもその通りだと感じています。難しく創造的な挑戦です。現地滞在中に、イリッペバター以外の製品やエコツーリズムの可能性などが話に挙がりました。本当にこれだけで森を残すことができるのか? 絶望すると同時に、でも現地には強い意志を持って前向きに取り組んでいる人たちがいる。なんとかできるかもしれないという希望を持ちながら日本に帰ってきました。

今回の訪問について、3月30日に報告会を開催します。ボルネオで見てきたこと、話したこと、感じたことをお伝えしたいと思っています。バーチャルエコツアーに参加するような感覚で、多くの方に参加いただければと思っています。 

村長のアグンさん。森を案内する途中で果物を採って振舞ってくれた
夜には昼間とは違った夜行性の昆虫を見ることができる