アグロフォレストリー通信#11 木を伐ることが大事?

kurumiru/ 1月 24, 2024/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments

皆さんは「木を伐る」と聞くと何を連想するでしょうか? 森林伐採、森林破壊が声高に伝えられ、木を伐るということは悪いことのようなイメージがあるかもしれません。私は森林を学ぶまで木を伐る=悪いことだと思っていました。確かに海外では木の伐採によって森林が減少し、色々な問題が起きています。しかし、日本では良いこと、むしろ必要なことなのです。森は人の手の入り方によって、大きく分けて3種類あります。人の手が全く入っていない原生林、人の手が入っても自然の力で天然に更新している天然性林、そして木材生産のため人が植えた人工林です。実は日本は国土の約67%、3分の2が森林です。これは世界的に見ても高い数値で、有り余った森林資源を持ち合わせています。そしてこの森林の約4割が人工林です。これも世界的に見ても割合が高く、この人が手を入れた人工林においては、人の手入れが必要であり、木を伐るということが重要となってきます。

屋久島の原生林

割り箸などで、この製品は間伐材を使用しています。という説明が書いてあるのを見たことがある方もいると思います。この間伐とは一体何なのでしょうか? 木材を生産する森林のつくり方として、まず苗木を植えます。その後5~8年間、苗木の生長を邪魔する雑草を刈ったり(下刈)、木にからみついたつるを切ります(つる切)。そして植えた木のまわりに自然に生えてきた木や、育つ見込みのない木を切ります(除伐)。植えてから15~20年くらいたつと、木と木の間が混み合ってきます。そこで混みすぎた林の一部を抜き伐りします。いわゆる間引きです。これが間伐です。これを何回か繰り返し50年くらいたつと、木は木材として使用できるほどの太さとなり、収穫の時期を迎えます。

間伐を行わないと、地面に光が差し込まないため暗い森になります。すると地面の植物や低い樹木が生えず、土壌が流出しやすくなり、水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化といった、森林の水源涵養機機能が低下します。また林内が混み合っているため、細くひょろ長い樹木に育ち、強風や土砂崩れに弱い森になります。

間伐前の暗い杉人工林

一方、間伐を行うと残った木が太く大きく育ちます。また間伐をすることで、光が地面に届くようになります。すると地面を覆う植物や低木の生長が促進され、風害や山地災害に強くなります。またそれに伴って水源として水を溜め込む機能や、土壌を保全する機能も高くなります。このように間伐は、良い木材をつくるためだけでなく、健康な森をつくるためには必要不可欠な工程なのです。

計画的に適切に木を伐って利用し、また植える。そうして持続的に資源を活用していくこと。これが健康な森をつくること、森林の資源を最大限活用することにつながっていきます。行き過ぎた伐採は多くの弊害をうみますが、適切に木を伐ることは森にとっても必要なことなのです。今の日本はどのような状態にあるのでしょうか? 次回は日本の森林や里山の現状についてみていきたいと思います。

間伐により林内が明るくなっている様子

2024年1月18日
武田瑞季

前回のアグロフォレストリー通信#10アグロフォレストリー通信 日本のアグロフォレストリー はこちらからご覧いただけます。

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