食の持続可能性を考える上では、森林破壊につながらないとか、肥料や農薬で環境を汚染していないとか、児童労働をはじめ搾取が行われていないとか、そんな原材料を使いましょうということがよく語られます。また、水産物であれば絶滅に瀕した魚は使わないようにしようとか。森林破壊や温室効果ガスの排出など、環境負荷の大きな牛肉や牛乳は避け、ベジタリアンやビーガン食を嗜好する人たちも増えています。これらのことに加え最近では、環境再生型の農業に注目が集まるなど、環境にとってマイナスの影響を減らすだけではなく、環境の再生に貢献するかたちで食料を生産することを提案、実践する人たちも目立ってきました。そうやって生産された食材としては、例えば、日本では里山再生に取り組んでいる人たちがつくる食材がそれに当たるでしょうし、私たちが提供する、アグフォレストリーで栽培されたバニラもそうです。
このような食材は、必要な栄養をとることや美味しさとか美しさを楽しむこと加え、その背景にある物語を伝えるという新しい食の価値を提供します。このとき食の作り手は、食材が生産される現場で紡がれる物語を食べる人に伝えるという新たな役割をも担うことになります。その役割は、原材料の提供者、それを使って商品をつくる人たち、はたまた料理として提供するシェフやパティシエ、その他食に携わるすべての人が担うことができます。そしてその皆さんは、そういう役割を通して世の中を少しでも良い場所に変えることができる存在でもあります。上で書いた嬉しい機会をいただいて、こんなことを考えたのでした。