Kurumiru/ 8月 23, 2025/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments
「森は海の恋人」これは宮城県気仙沼市のNPO法人のスローガンです。牡蠣の養殖漁場を守るため、上流から下流まで一体となって取り組む必要性を訴え、植林活動をされています。森に雨が降り、その水が川となり海に流れていく。このように森と川と海は密接な関係にあります。水の流れのはじまりの森林。今回はその森林を整備する必要性を紐解いていきたいと思います。ただ一口に森といっても、実は健康な森と不健康な森があります。見かけ上は木があって緑の場所でも、不健康な森では森の機能は一部しか果たされないことが研究でわかってきています。まずここでは、健康な森とは明るく光が差し込み、多様な種の樹木によってできている森をさします。一方で不健康な森とは植林によって単一の樹種で成り立ち、整備が行き届かず地面が暗くうっそうとしている森をさします。いわゆる一度人の手が入った、手入れ不足の人工林です。不健康な森では土壌を保持する力が弱まり自然災害につながります。ひょろひょろの木が育つことで根っこの力が弱まり土砂崩れが起きるというのはイメージしやすいですが、そのほかにも色々なメカニズムがあります。
ところで、何日も森に雨が降らなくても川が干からびないことを不思議に思ったことはありませんか? その秘密は土の中にあります。森に降った雨はゆっくりと地下に染み込み時間をかけて川として流れていきます。一方で木々が生えていない裸地では水はそのまま流れていくので一気に増水します。森には水を溜め込む機能があり、川の水の急激な増水や渇水を防いでくれます。水を溜め込む機能の決め手は土壌の水の染み込みやすさです。ぎゅっと押し固まった土では水は吸収されずらく、地表を流れ出る水が多くなります。一方、土に隙間があるスポンジのような状態では水が染み込みやすく地下に流れていきます。健康な森では様々な種類の根っこが発達することに加え、樹種の多様性が生き物を増やし、ミミズなどの土壌生物が増えることで土の中にたくさんの隙間ができます。そうなるこどで雨水をより吸水しやすい土壌ができあがります。また、東北大学の研究によると健康な森では窒素が満遍なく使われていたのに対し、不健康な森(混み合ったスギ林)では硝酸態窒素という物質が多く残っていたそうです。これはスギが硝酸態窒素を利用できないことに由来します。硝酸態窒素は雨水に溶け込みやすく、多くなりすぎると河川の水質が悪化します。また浄水場で完全に除去することが難しく、地下水や井戸水などから検出されることもあります。硝酸態窒素や亜硝酸態窒素が多く含まれた水を飲むことで中毒を起こして人(乳幼児)や家畜が死んでしまう事例も発生しています。これらのことから災害の抑制と貯水、それから安全で美味しい水を得るためには健康な森づくりが必要だということがわかります。(参考: 清和研二「スギと広葉樹の混交林 蘇る生態系サービス」)
2025年8月22日武田瑞季
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