Kurumiru/ 11月 27, 2023/ アグロフォレストリー通信/ 0 comments
「文化」というとみなさん何を思い浮かべるでしょうか? 芸術、美術、文学といったものを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、文化は、英語では「culture」、ドイツ語で「Kultur」のであり、もとの意味は、いうまでもなく「耕す」ことなのだと先日読んだ本に書いてありました。日本ではもっぱら心を耕す方面ばかり考えられ、芸術や学問としての文化が重視されていますが、地を耕して作物を育てること、これが文化の元々の意味なのだという内容でした。農業の起源は約1万年前と言われています。人類は戦争のためよりも、芸術や学術のためよりも、食べる物を生みだす農業のために、膨大な時間を費やし、多くの汗を流してきました。アグロフォレストリーは1970年中期に、カナダの研究者によって提唱されました。アグロフォレストリーという言葉が使われ、研究が始められたのは近年ですが、その形は自然発生的に以前から各地で伝統的に行われていました。紀元前7000年頃に始まった焼畑式農業と関係していて、焼畑式農業がやがて森林破壊を招くことになり、植樹しながら農業も同時に行う方法が生まれたとも報告されています。
今私達が食べている食物は人間が食べやすい様に、収穫しやすい様に、長い時間をかけた多くの工夫によってできています。収穫しやすい様にというと機械化が思い浮かぶと思いますが、もっと遡るとその品種も工夫してきた歴史があります。例えば麦。麦というと大きい実がつく穂を想像しますが、今の麦には元々野生だった原種があります。野生種の麦は細くスラッとしていて、粒も小さいです。さらには穂に手を触れると実がぱらぱらとこぼれ落ちてしまいます。これは種を自然に散布するために適応した結果です。一方で、栽培されている品種の麦は、穂に触っても実がこぼれ落ちません。そのおかげで効率よく収穫ができます。まさに人類が食べるために特化し、長い時間をかけて改良されてきました。
今日私達が食べている食物こそが、人類が長い歴史の中で発展させてきた文化財なのであるというわけです。人類がいかに工夫して農業、食料生産というものを発展させてきたのかを知ると、大変面白く、発展してきた農業、そして今日食べている食物のありがたみをより感じます。(参考:中尾佐助 著 栽培植物と農耕の起源)
2023年11月22日武田瑞季
前回のアグロフォレストリー通信#08「アグロフォレストリーが生き物を救う? 」はこちらからご覧いただけます。
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