圧倒的な美しさ、度肝を抜く香りと美味しさ、その真ん中を未来へと向かって凛と貫かれる思想。
加藤さんの作品に触れる度に感じるものです。毎回毎回姿を変えて表現されるそれを味わうことが僕の至上の楽しみになっています。
「金木犀と烏龍茶の琥珀羹」の琥珀羹に舞う金木犀は千葉県鴨川の苗目の里山で収穫されたもの。そして、その下の水羊羹にはアグロフォレストリーバニラが使われています…
2022年9月のトークイベントで加藤さんと苗目の井上さんとご一緒しました。加藤さんの里山のタルトと里山のドリンクをいただきながら、マダガスカルの森のような農園(アグロフォレストリー)のことや、日本の里山や伝統の素晴らしさ、それを維持、再生するために私たちがいま大切にしなければならないことを3人で語りました。50年先を見つめる加藤さんの眼差しと強い意志に触れて感動したことを覚えています…
だからこのお菓子は、僕にとって夢のような作品です。金木犀が舞う緋色の琥珀羹からすき出た光が美しい未来を映し出しているように見えました。その容姿をうっとりと眺め、口の中で溶けていく香りを心ゆくまで堪能しました。
このお菓子をつくるために加藤さんが半年間も通い続けたという和歌山の郷土銘菓処「ふく田」さんにいつか足を運びたいと思っています。